日曜日の終わりに

日曜日の夕食は早めに済ませるのが習慣になっている。

ちょうどサザエさんを見終える頃、食べ尽くした皿の上には、二人分の箸やらスプーンやらが積み重なる。

彼女はテーブルに肩肘を付いてタバコをくゆらせ、僕はコーヒーをすすりながらテレビに見入る。

「ジャーンケーン…」

何週間か前から僕は感づいていたのだが、彼女はサザエさんとのジャンケンに勝ったことがない。

「グー」

彼女は肘をついた右手の指にタバコを挟んだまま、かったるそうに口だけを突き出して、そう言った。

「また、あいこだな。ってか、ずっとあいこじゃないか」

僕はくくっと笑いながら、彼女を冷やかす。彼女はジャンケンに勝ったことはないのだが、ことごとくあいこなのだ。いつもサザエさんと同じ手を出す。

彼女は灰皿を手元に引き寄せると、吸いかけのタバコを揉み消した。灰皿から立ち上る数本の濃い煙の帯が、僕の顔をいぶす。

彼女は嗤った。

「サザエさんが何を出すかわかるんだもん。ぜーんぶ、お見通し。だから、あえて、あいこ」

僕は釈然としないまま笑い返そうとしたが、彼女の目が笑っていない事に気づいて、慌てて視線を逸らした。

彼女はやり場を失った僕の視線を、ずる賢そうに捕まえた。

「昨日の夜、誰と一緒に居たのかしらね」

彼女はまた嗤った。

(ぜーんぶ、お見通し)

彼女の声が、僕の頭の中に何度も何度も鳴り響いた。

【了】

「瞼の裏側」について
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by riv-good | 2007-11-18 20:44 | 掌編小説『瞼の裏側』

約10年の関東生活を経て長崎にUターン。長崎の生活事情や日常に沸き起こる出来事を書き綴っています。歌も歌います。フードアナリスト協会 正会員。何者でしょうか?


by 裕一郎
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