龍雲

「ここは龍の乗る雲、『龍雲』の名所です。」

と、小高い山の上に案内されて、しばらく頭上を流れる雲を眺めていた。

気流が異常なせいか、雲の動きは尋常でなく早い。

まるでテレビの台風情報のように、上空の時間だけが早回しされているようであった。

雲がぐるんと大きく渦巻く。

まさしく龍が乗って登場するかのような、墨絵で描かれたかのごとき巨大な「龍雲」が目の前に広がった。

わたしはカメラを手にしたまま茫然と眺めていたが、はっとして我に返った瞬間、それは小さな渦巻きとなり、次第に姿を消しつつ視界の外へと流れていった。

雲は絶え間なく流れていく。ときおり、小さく渦巻くが、さきほど見たような壮大な龍雲はなかなか現れない。

まだかまだかとシャッターチャンスを伺ううち、わたしは夢から覚めた。
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by riv-good | 2007-10-22 21:57 | 掌編小説『瞼の裏側』

約10年の関東生活を経て長崎にUターン。長崎の生活事情や日常に沸き起こる出来事を書き綴っています。歌も歌います。フードアナリスト協会 正会員。何者でしょうか?


by 裕一郎
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