長崎の美味しいちゃんぽん

「長崎ちゃんぽんの美味しいお店はどこですか?」

非常に悩ましい質問である。

長崎を訪れた観光客が「美味しいちゃんぽん」を求めて地元の人に尋ねる。

すると彼はこう答えるのだ。

「リンガーハットが良かですばい」

この件は、ネットで読んだり人づてに聞いたりする話で、長崎を訪れたのにリンガーハットを紹介されてガッカリしたというオチである。

株式会社リンガーハット自身がこれをどう意識しているのかは分からないけれども、長崎の人がリンガーハットを勧める理由は分からないでもない。

一人でも家族でもデートでも使うので日常的な馴染みがあるし、どの店で食べても味のバラツキが少ない。価格も安い。

リンガーハットのちゃんぽんは長崎県内ではいわゆる「テッパン」のレベルにあるのではないかと思う。

「テッパンのちゃんぽん」

と言うとそれはそれで「焼きちゃんぽん」と混同してしまいかねないが、リンガーハットのちゃんぽんは、いつでも気軽に食べられるごくごく標準の味だ。

とはいえ旅行者であるならば、全国展開しているありふれたお店を紹介されたのでは納得できないだろう。

「美味しい長崎ちゃんぽんのお店はどこですか?」

いっぱしの長崎人であれば悩む。食通の長崎人であればあるほど答えに窮する深い問いである。

問いかけられた者は、インスピレーションを得るために禅を組んで瞑想に耽るかもしれない。

またある者は、食材の好き嫌いから始まり、その生い立ちや、ふだんの生活習慣などなど、あなたのことを根掘り葉掘り訊き出すかもしれない。

もしかすると、

「トルコライスでも食べながら、じっくり話ばせんですか?」

と、違う種類のメシを勧められる結果に至るかもしれない。

それへの回答はハードルが高い。

スープ・具材・麺、店によってどれも違う。そのバリエーションは、いわば各家庭のカレーライスに匹敵する。種類が豊富すぎるのだ。

旅行者がはたしてどのようなちゃんぽんを「美味しい」と感じるのか?期待に応えるためには、その人の趣向や味覚についての情報を事細かにヒアリングする必要性が出てくる。

訊かれる長崎人とは逆の立場になってみよう。

とりわけ団体で訪れる観光客にとっては、ツメツメの旅程の中において、出会えるちゃんぽんの選択肢はきわめて限られる。

おそらく広告力のある大手のちゃんぽんを食すことになるだろう。それでも、長崎ちゃんぽんのバリエーションのone of themでしかないことは忘れて欲しくない。

「まぁ、こんなものか」

という味だったなら、他に美味しいちゃんぽんがきっとある。
[PR]
by riv-good | 2013-01-24 19:50 | 長崎の呑喰道楽

約10年の関東生活を経て長崎にUターン。長崎の生活事情や日常に沸き起こる出来事を書き綴っています。歌も歌います。フードアナリスト協会 正会員。何者でしょうか?


by 裕一郎
プロフィールを見る