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行く年

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とても遅れてしまったが、親戚・知人宛に新年の挨拶を兼ねて結婚の報告を送ることにした。

この結婚写真を撮ったのはもう何年前だろうか…と思っていたら、何のことはない「今年」の出来事だった。

「思いのほか、2012年の正月だったね」とヨメに話をしたら、同じく遠い昔だったのような感覚を持っていたようだ。

今年はもう終わる。しかし、この1年に起こったイベントのひとつひとつが、1年ごとにバラバラに起こった数年前の出来事のように思える。

ヨメと入籍したのは2011年2月28日に遡る。震災の半月前だ。

そもそも、この二人は「結婚」を考えていなかった。単なる制度の問題だし、まぁやんなくてもいいんじゃないの?というのが、二人に共通する意思だった。

しかし、義母の切なる願いがあって入籍だけは済ませることにした。二人は夫婦となった。

当然の成り行き上、結婚式はどうするか?という話題に辿り着くわけだが、「ぜひとも挙げねばならぬ」という理由が、やはりこの二人には見出せなかった。

ヨメはウェディングドレスに憧れる人ではないし、わたしの実家からも「世間体が云々」といったプレッシャーも無い。

なので、「結婚式なんて挙げなくていいや」というスタンスを保った。今でもその必要性は感じていないし、おそらくこのまま挙げないのだろう。

そんなわれわれが結婚写真を撮るに至ったのには、また別の事情があった。

今年の初め、病に伏している義理の祖母がいた。昨年、膵臓癌を患って進行した。医者からは「年は越せるかもしれないが、その後は分からない」とすでに告知を受けていた。

祖母はヨメにとっての育ての親だった。わたしと暮らすまではずっと祖父母と住んでいたこともあって、祖母の存在は「母」と変わりがなかった。

祖母が世を去る前に、せめて婆さんだけには白無垢姿を見せようとヨメは決意した。

式を挙げるのではなく、写真館に連れ出すのでもなく、写真屋を連れて来ようというアイデアを導き出した。祖母に身体的な負担をかけさせないためだった。

ヨメは茨城県にロケーション撮影をしてくれる写真館を見つけた。ひたちなか市まで出向き、担当の方に希望を伝え、それが実現できることが分かると涙を落とした。

この結婚写真はそういう経緯があって撮ったものだ。

年賀状にはあえてスタジオで撮った写真を使ったが、メインテーマであるヨメの実家で撮った婆さんとの団欒は、膨大な数を占めている。

正月に結婚写真を撮ると、4ヶ月後に婆さんはこの世を去った。

四十九日を済ませると、ヨメの実家である都営団地の契約を解約した。これで、ヨメの実家はなくなった。

1年に1つずつ起こってもおかしくはない、人生の一大イベントに満ちた1年だった。

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Enchante
http://enchante2006.com/

ロケーション撮影をお願いした茨城県ひたちなか市の写真館。
by riv-good | 2013-01-01 14:38 | ヒトの衣谷さん

約10年の関東生活を経て長崎にUターン。長崎の生活事情や日常に沸き起こる出来事を書き綴っています。歌も歌います。フードアナリスト協会 正会員。何者でしょうか?


by 裕一郎